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“TikTokおじさん”も出現、若者SNSにすり寄る悲哀とそのメンタリティーとは?

疎まれつつもどこか憎めない“おじさん”がさまざまなジャンルで題材にされており、ちょっとしたブームが起こっている。ドラマ『おっさんずラブ』の大ヒットも記憶に新しいが、一方で、若者に人気のアプリ『TikTok』におじさんのユーザーが増えていて若者から「痛い」「なんか嫌だ」といった反応が出ているという。そこで、雑誌『SPA!』でおじさん企画を連載しているフリーエディターの柚木ヒトシ氏に、賛否が取り上げられがちなおじさんの生態について話を聞いた。おじさんのメンタリティーを考察しつつ、“痛いおじさん”にならないためのポイントを考えてみよう。

タイムラインに大量発生? ビッグニュースを即シェア「速報おじさん」

  “TikTokおじさん”以外にも、SNSやネット文化には度々、若者にすり寄るおじさんが存在していた。柚木氏によると、基本形は、“速報おじさん”だという。Yahoo!トピックスやスクープ記事をTwitterFacebookのタイムラインでシェアする。これは、新聞の号外を配る人の心境に似ていると語る。

「取材をした記者がいて、メディアが記事として世に出して、それを配っているはずなのですが、配る人はみんなドヤ顔をしています。“速報おじさん”のメンタリティーはまさにこれ。例えば、文春オンラインの記事更新を待ち構えて即時にシェアするなどの例ですね。ビッグニュースにフリーライド(タダ乗り)するんです」

 柚木氏は、おじさんとFacebookの親和性の高さも指摘する。

SNSで人気者になるためには、「面白い」か「早い」が分かりやすい指標です。SNSおじさんはニュースを作ることはできないですが、速報として意見を上乗せすることはできる。おじさんがFacebookにあふれている理由にも関係しています。Twitterは「今面白いかどうか」、対してFacebookは知人への投稿なわけですから、ハードルは低い。これはありがちな承認欲求を満たすためのもので、いわばSNSおじさんのメンタリティーとしてはVer.1.0です」(柚木氏)

 ビッグニュース・旬の話題にフリーライドするパターンとしては、その他にも上から目線でヒットコンテンツを語る“ラ・ラ・ランドおじさん”(ヒット映画『ラ・ラ・ランド』のレビューを、自らの恋愛経験とともに上から目線で語る)などがあった。そんなおじさんSNSがより高度に進化した例として「今、〇〇空港です。これから〇〇に旅立ちます!」的な投稿をする「エアポート投稿おじさん」があるという。その例を見てみよう。

進化形は「上げ」「晴れ」「盛り」要素を兼ね備えた「エアポート投稿おじさん」

 ネタを作りたいけれど、反応の少ないものはSNSに上げたくない。そこで、エアポート投稿おじさんは、SNSでヒットする3要素を満たしているという。

 SNSのタイムラインは「上げ」「晴れ」「盛り」の3要素が基本だと思います。「上げ」はとにかくテンションが上がっている状態で、とにかく撮っちゃえというようなことだと思います。「晴れ」は非日常感。「盛り」は言葉の通りで先述の速報おじさんのマインドですね。エアポート投稿おじさんはよくある“忙しいアピール”を匂わせ投稿するだけでなく、空港を訪れた高揚感の「上げ」、これから違う場所に旅立つ「晴れ」の非日常感、自分はエグゼクティブだと暗にアピールできる「盛り」。まさに、おじさんのメンタリティーを自己開示した投稿になっているんです。

なぜ若者文化にすり寄るのか? “時が止まったおじさん”のボリュームゾーン

 そんなおじさんがTikTokはじめ若者文化にすり寄るような動きをするのか。

団塊世代にはよく働き、出世し、いい家庭を作るのが社会人の美徳とされた時代に対して、現在は、晩婚化も進み働き方も多彩になり、生き方が多様化。そういった団塊ジュニア世代が世の中を回すボリュームゾーンになっています。仕事で役職が無かったとしてもそこにコンプレックスを感じない層が多い現代は、“偉くないおじさん”の数が多くなっている。つまり、行動が20代の頃と変わらない30代40代、“時間が止まっているおじさん”も多いと思います」(柚木氏)

 SNSの浸透により“おじさんの生態”が明らかになったが、その是非については次のように明かす。

SNS浸透以前は、おじさんの生態は“不明”だったんですね。その実態や、情弱性が明らかになることで、若者にとって“怖くない存在”であることが分かってきたという一面があります。良い面もありますが、一方で昭和の頑固親父の時代とは異なり、SNSの浸透によりおじさんの牽引性が崩壊しつつあります」(柚木氏)

 つまり、気持ちは若いつもりだが、感性はおじさんという層が厚くなっている。感度(面白さ)のかけっこができず、それに勝とうとすると「痛い」と言われてしまう。ある意味、“浦島太郎おじさん”になっているという。そうならないためにはシンプルな心掛けが必要だ。

痛いSNSおじさんにならないための第一歩、若者文化を単純に「いいね」といえるか

 今の痛い投稿で考えられるのが、“カメラを止めるなおじさん”だという。ビッグウェーブに乗ったつもりでも、世間的には8月中旬ごろが話題のピークであり、速報性もなければ内容も知れ渡ったものに対して、したり顔で「これは傑作だ!」と言われても面白くない。柚木氏によると、SNSとの付き合い方で“痛いおじさん”にならないためには、発信するよりも自らが新たな流れを受け入れられるかどうかが重要だという。

「若者文化はロジカルに言語化するのが難しい“感覚的”な部分があります。SNSは女性的な文化です。女性同士で大切なのは『肯定と共感』。対して男性文化では『標本と設計図』。男性は面白さの理由(設計図)を求めがちなんですが、「何が魅力なの?」と質問するパターンは危ないです。若者に対して5W1Hの質問は禁句です」(柚木氏)

 否定はせずに、純粋に「いいね」といえるかどうか。それだけで良いという。仮に面白い、と思えた場合でも、その理由(設計図)を深堀り質問して、標本にしない(体系化しない)こと。つまり「どこが面白いの?」といった質問や、「うん、〇〇の部分が〇〇だから面白いよね!」なんて面白さの理由を語るのはナンセンスなのだという。

 “嫌なら見るな”は若者に通用しない。「この記事をみたおじさんは先述の速報おじさんと同様に”俺もそう思っていた”と乗っかる人も発生することでしょう、と柚木氏。そうしたおじさんの投稿を否定するわけではないが、何が“痛い”ポイントなのかをしっかりと理解してSNSと付き合っていくことが大切なのだ。